『商売心得帖』 松下幸之助


松下幸之助さん

  • 実業家、発明家、著述家
  • パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者
  • PHP研究所創設者
  • 財団法人松下政経塾を設立
  • 政治家の育成
  • 死亡時遺産総額は約2450億円で、日本で最高とされている



まずは、こんなお話から

立派なお菓子屋さんがありました。そこに、ある日一人の乞食が、まんじゅうを一個買いに来ました。 お店の小僧さんは、渡すのを躊躇していたので、店のご主人がでてきて「それは私がお渡ししましょう」といったのです。

主人は、代金をもらい「まことにありがとうございます」と言って深々と頭を下げました。

小僧さんは、不思議に思ってなぜそうしたのか聞きました。 これまでどんなお客様がみえても、ご主人がご自分でわざわざお渡しし、深々と頭を下げたことはなかったのです。

主人は「これが、商売冥利というものだ」といいました。

「あの人は、いっぺんこのうちのまんじゅうを食うてみたいということで、自分が持っている一銭か二銭のいわばなけなしの全財産をはたいて買うてくださった。こんなありがたいことはないではないか。」

「そのお客様に対しては、主人の私みずからこれをさしあげるのが当然だ。それが商売人の道というものだよ」



お得意さん

  • お得意さんを増やす努力を重ねることはもちろん大切
  • 現在のお得意さんを大事に守っていくということも、それに劣らず大切
  • 一軒のお得意さんを守りぬくことは百軒のお得意さんを増やすことになる
  • また逆に、一軒のお得意さんを失うことは、百軒のお得意さんを失うことになる
  • このような気持ちで、商売に取り組んでいくことが肝要



長所を見る

  • つとめて社員の長所を見て短所を見ないよう心がける
  • 任せることによって、それぞれの人の力もおのずと養わると考えられる
  • なるべく部下の長所を見るようにし、またその長所を活用するようにすることが大切


  • 欠点があればそれを正すように心がけることも大事
  • 長所を見ることに七の力を用い、欠点を見ることに三の力を用いる


  • 部下である人もまた、これと同様に、上位者の長所を見るように心がけて尊敬し、短所はつとめてこれを補うように心がけることが大切
  • もしこれに当を得たならば、よき部下となり、上位者の真の力となるにちがいない


  • 豊臣秀吉は、主人である織田信長の長所を見ることに心がけて成功した
  • 明智光秀はその短所が目について失敗した



社是、社訓、定款とは

  • 社是、店訓をいったんつくったならば、店主自身がそれに従わなければならない
  • 店員は守らなければならないが店主は守らなくてもよい、ということは許されない
  • 店主が率先して誠実に守れば、お店は逐次繁栄していく


  • 社是や社訓は、それらの会社の定款ではない、定款は別にある
  • その定款をどう生かして成果をあげていくかということが、社是、社訓
  • 会社の定款というものは、国でいうなら憲法



『商売心得帖』 松下幸之助

2020/11/07