ボケに対して、間違ったコミュニケーションをしていないでしょうか? 『看る力 アガワ流介護入門』から学ぶべきことがたくさんありました。
介護で避けて通れないのが認知症
- 認知症は、ひと言でいえば記憶の障害
- 自分の中に入ってきた新しい情報をうまく処理できなくなっている状態
- 人間は過去の経験を記憶という形で残している
- それと照合しながら、今起きていることに対してどう行動すべきか判断をする
- 認知症は、その過去の記憶にうまくアクセスできない、あるいは即座につながらない
- 記憶は全部なくなるわけではなく一部は残っているので、そこがややこしいところ
- 少ない記憶をかき集めて情報を処理するので、普通の人とは違った行動になる
- 目の前のことは見事に処理する
- 囲碁や将棋が強かった人と対局すると、かなりの認知症であっても強い
- 昔学習したことは、意外といつまでも頭に残る
- 一方で、比較的新しいこと、ついさっきのことは忘れてしまう
認知症の対処法の基本
- 赤ちゃん言葉は使わない
- 最後の最後まで、きちんとした一人の大人として扱う
- バカにしない、怒らない、とがめない
- 本人がうまく処理できなくても非難しない
- バカにされない、とがめられないという安心感を与えることが大事
- まわりから見たら理屈に合わない発言や行動でも、本人にとっては、残った記憶と情報をもとに自分なりにベストの判断をくだし行動しているので整合性はある
- 本人としては、怒られる意味がわからない
- そこが私たちが最も理解しなければならないポイント
教育的な効果は、絶対期待してはいけない
- 「いい加減に覚えてよ!」と怒っても、それは教育的指導なので、まったく効果はない
- 何を言われても決して否定しないこと
- 繰り返すだけでいい、同意しちゃえばいい
認知症の人は、体からにじみ出るような気持ちには極めて敏感
- 前向きな気持ちは、相手が認知症でもしっかり伝わっている
- どれくらい前向きな気持ちで接していたか、これによって患者さんの行動も決まる
- 不穏な気持ちで接すれば、患者さんは落ち着かない
- 認知症の人は、相手の感情がわかる
感情の記憶は、最後まで残る
- 認知症の方は、言われたことは記憶できないけれど、相手が自分に対してどんな感情を持っていたか、怒りなのかイライラなのか愛なのか、そういうことだけは、きちんと記憶に残る
- キツく接すると「この人は私に対して、いい感情をもってない」ということだけが残る
- それを繰り返すと、その人に対する恐れや不信感だけがつのる
- 介護する側の気持ちをフラットにしておかないと伝わってしまう
- フラットが大事
状況判断力はある
- ふだん一緒にいない人が来たらいいところを見せようとする
- ちゃんと、つじつまが合うような話をする
- その場を取り繕う能力もある
- それが最大の誤解を生む原因
一人暮らしは老化防止の特効薬
- 一人、あるいは高齢者同士の暮らしは、少々体調が悪くても自分で動かなければいけなくて、緊張感がある
- 一見苛酷に思えるが、老化防止や認知症の進行を防ぐ特効薬でもある
- 周囲の人間が、すべて手をさしのべたり、施設に入ると、そこまでの緊張感はなくなる
- 結果として気力が落ちるし、体を動かさないから体力も低下する
- 周りがよけいな世話をやくことで、結局何もできない存在にしてしまう
- 周りの人が何かやってくれるとわかると、自分ではもう何もやらなくなる
本人が別に困ってなければそれでいい
- かなり認知症が進んでも、ある程度のレベルを保つ生活は十分可能
- 一人暮らしだと、お風呂はめったに入らない、部屋は汚いまま
- きちんと生活できてないと心配
- それは、周りが思う普通の生活、型にはまった暮らし
- 本人が別に困ってなければそれでいい
- ゼロとは言わないが、周りの人が思うほど危険なことは、まず起きない
ワンクッション入れる
- 他人を絡ませたほうが、お互いにいい
- 身内の世話こそ、他人に頼むほうが双方にとって幸せ
- プロのスキルは違う、知識、経験、技術
- 片手間では介護はできない
- プロの立場からすると、体を起こす、位置を変える、食事の介助、排泄の世話、簡単そうに見えてすべてにコツがある
- 素人が見よう見まねで「気持ちさえあればできる」みたいな感覚はもたない
介護後のことも考える
- 独身の娘さんが会社をやめてまで面倒を見ても、何年か後に親が亡くなったら、そのあとどうやって過ごすのか?
- 経済的な問題もあるけれど、社会との関わりが切れてしまうことの方が大きい
- 自分の親はプロに預けて、自分はその支払い分を稼ぐぐらいのつもりで、仕事をやめずに、社会的役割をはたせばいい
必要とされる状況をつくる
- 認知症は、完全に元に戻るということはない
- 認知症が一直線にどんどん進行するのをある程度抑えることはできる
- 「なんで起きなきゃいけないの?」「目が覚めたら、また昨日と同じようなことをしなきゃいけないんだよ」と認知症の方は言う
- やり甲斐のようなものがあるのとないのとでは、ずいぶん違う
- 自分はなんの役にも立たないでみんなの世話になって、一日一日、また生きなきゃいけないのはけっこう辛いこと
- 最も効果があるのは、自分が周りから注目されること、必要とされること
- 「自分がやらなければこの場は回らない」という状況におかれると、その人のもっている最大限の能力、残されたものが活性化される
- 役に立つこと、期待される役割があることが、人間の生きる意欲の源
- 必然が必要
- 手芸やお絵描きなど趣味は必然がない
- 趣味の会ではダメ
- 内職ならお金を稼ぐという意味ではなく、やりがいを感じる
90歳を過ぎると7割は認知症
- 脳血管が詰まったり破れたりすることで起こる脳血管性認知症と、脳神経細胞が死滅し脱落して起こるアルツハイマー型認知症がある
- 治療法は似たようなもので、後者は今もって原因も不明
- 認知症の発生率は75歳を過ぎると急激に上がる
- 90歳過ぎた方でも、30%は認知症にならない
- 90歳を過ぎると7割は認知症になっているとも言える
- 最近癌の患者がすごく増えたというが、昔は癌になる前にみんな死んでいた
- 認知症も同様
認知症の問題は、生活能力
- 認知症かそうでないかという境目は、生活に支障があるかどうか
- 本当に生活に差し障りがあるような物忘れが出てきたときに、初めて認知症ではないかと疑えばいい
- 認知症の問題は、生活能力ともいえる
認知症の早期診断
- 認知症の早期診断は、患者さんのためというより、ご家族のためにある
- 早期診断は、ご家族が対処の仕方を早く学べるという意味で、メリットがある
- 認知症の方の言動は全部、その人なりの理由があり、本人にとっては正しいこと
- 周囲はすべてを受け入れて対処するしかない
- 早く知っておけば慌てずに対処できる
- ちゃんと受け入れるために腹をくくる時間もできる
- 認知症のいちばん辛いところは、本人はともかく周囲が、それをなかなか受け入れられないという点
認知症として認識するのは難しい
- 自分自身を認知症として認識することは、いつまで経っても難しい
- 認識する頃には、認識したこと自体を忘れちゃう
- 本人がそうなんだから、家族だってなかなか受け入れ難い
2020/02/17