がっちりマンデーで社長さんのおすすめということで読んでみた本です。
日下公人さんは、ものすごい経歴の持ち主です。
日下公人(くさか きみんど)さん
- 東京大学経済学部卒
- 三谷産業株式会社監査役
- 日本ラッド株式会社監査役
- 日本長期信用銀行取締役
- 原子力安全システム研究所最高顧問会議・顧問
- (社)ソフト化経済センター理事長
- 東京財団会長
- 未来予測の正確なことに定評
『発想の極意』は、こんなプロローグから始まります。
学生の頃、教授から「金魚鉢の法則」というのを教えてもらいました。
「鉢に入れられた金魚は右へ行ってガラスにぶつかり、左へ行ってまたぶつかる。そんなことをしているうちに、やがて金魚鉢の寸法を覚えて、もうぶつからなくなる。身をもって会得したことだから、それはそれでいいのだが、もう少し大きい金魚鉢に入れても、金魚はやっぱり中心部ばかりクルクル回っているんだね。これは「サラリーマンの法則」と呼んでもいいんじゃないかな」そして、教授はニヤッと笑いました。
サーカスの象も似たようなお話ですね。
「アナリシス」と「アナロジー」
- 自分の考えを相手に伝えるには「アナリシス」と「アナロジー」の二通りの方法がある
- 「アナリシス」は、論理
- 「アナロジー」は、たとえ話
- 理屈ばかりで考えていると、ひらめきやアイデアが育たず、直観力や洞察力も低下する
- たとえ話を使っていくと、説得力がぐんとアップする
好例として、アメリカから「日本市場は閉鎖的だからドアを開けよ」と言われたとき「日本のドアはスライディング・ドアだから、正面から押しても開きません。丁寧に、礼儀正しく、横に滑らせれば開きますよ」と返した。
- 科学はアナリシス(分析)を重視する
- アナリシス万能主義はひらめきにフタをしてしまう
- 人間にはアナリシスよりもっと秀れたアナロジー(類比)のパワーがあるので、一瞬にして結論に到達することも起こり得る
- アナロジーの力こそ、人間が生まれながらにもっている直観力
「製品」の価値だけでなく顧客の「欲求充足」を忘れてはならない
- 10代の少女にとって、靴の価値はファッションにある
- 価格は二の次であって、耐久性などまったく意味がない
- 母親になると、ファッションが絶対ではなくなる
- 重視するのは耐久性、価格、はき心地である
- 10代の女の子にとって価値のあるものが、母親には価値がない
- 何を価値とするかは、顧客だけが答えられる
- 消費者が買っているのは「製品」そのものではなく「欲求の充足」
アカデミズムからプラグマティズムへ転向した最先進国は日本
- 「アカデミズム」とは、学問や芸術の理論を重んじる立場
- いったい何の役に立つのか、いつ役に立つのか、それが分からないのがアカデミズム
- 「プラグマティズム」とは、知識や思索は道具にすぎず、行為や実践こそが重要だという立場
- 何の役に立つか、その目的が見えているのがプラグマティズム
ストーリー力
- 知識や暗記が大事なのではない
- データや統計も、それを見て、そこからどんなストーリーを組み立てられるかがカギになる
- マンガやアニメを通して鍛え上げられた日本人の「ストーリー力」が強みを発揮する
- ストーリー力を磨いていくと、そこに日本人の「情」と「意」が浮かび上がってくる
- その基盤の上に新しい「知」を築いていく
- そうすれば、そこには「知・情・意」の三拍子が揃った新しい日本人が生まれてくる
ヒアリング・リテラシー(聞く力)
- 昔と比べて低くなったように思えて心配なのはヒアリング・リテラシー(聞く力)
- 昔は、昔話や童話を読み聞かせをし、子供のヒアリング・リテラシーを育てていた
- 話を耳で聞く体験は、映像を見るよりも不完全なので、足りない部分はイマジネーションで補った
- 耳で聞いた情景を頭に思い浮かべる。それがひらめきを養う元にもなった
- 話を読み聞かせる間、子供は自分が親を独占してサービスを受けていることに深い満足を覚えた
- 近年、これらの要素が欠けてきている
『発想の極意』では、最後に、お年寄りのつぶやいた言葉で締めくくっています。
私は、あの大震災のとき、一人のお年寄りがつぶやいた言葉を忘れることができません。 「津波は百年に一度くらい来るらしいが、どうせ来るものなら、来たのが私のときでよかった。孫の時代では孫たちが可哀そうだ、、、」と。この言葉こそ、「災後派」となった「戦前派」の思いを代表しています。
『発想の極意』は、日本人としての考え方、生き方について、深く深く心にしみるように語りかけてきます。何度も読むことで理解が深まるような気がします。
2020/12/17