「結果を出せる人になる! すぐやる脳 のつくり方」 (楽天/Amazon)
茂木健一郎

私の娘は6年生ですが、この本がとても気になると言っていました。小学校高学年ともなるとこのような本にも興味を持つのですね。
脳科学者の第一人者である茂木健一郎さんは、TVの「アハ体験」でおなじみですね。実はSONY研究所の上級研究員でもあるんです。東大出身です。

「結果を出せる人になる! すぐやる脳 のつくり方」は、楽天レビューは良いのですが、Amazonレビューはあまり良くないものもあります。
Amazonでは「いろいろなものの焼き直しにすぎない」というレビューがありました。
自己啓発系の本をたくさん読んでいると「あ、知ってる話だ、これも知ってる」という場面が多々あります。しかし、知らない人にとっては、ギュッと上手くまとめられているので逆に良いのではと思います。
ジョブズのカリグラフィーの話」や、「三人のレンガ職人の話」も脳科学と結びつけて出てきます。


茂木さんは、最後にノーベル物理学者アルベルト・アインシュタインの言葉で締めくくっています。アインシュタインは「ベロを出した写真」や「相対性理論」で有名ですね。
何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない


ではさっそく「結果を出せる人になる! すぐやる脳 のつくり方」から、いくつかエッセンスをご紹介します。


やらないことを決める

  1. やることが多すぎて時間がない
  2. やらないことを決める
  3. 時間が空く
  4. やることを増やせる


特別に意識せず、その行為を習慣化する

  • 脳の前頭葉には「努力するために使う回路」がある
  • この回路か活性化されている状態が「頑張っている」ということ
  • この「努力する回路」は、何かを習慣化したり継続したりすることには向いていない
  • 努力する回路」は、脳のエネルギーを消耗させるため、頑張り続けると疲れてしまうから
毎日「頑張るんだ」と意識し続けている人は、相当な脳への負荷がかかっています。
ではどうするのか?というと、目の前の努力を「頑張る行為」ではなく、何も意識せずに行えるよう「習慣化」するとよいのです。
最初は努力という強度のある負荷がかかってしまいますが、いつかそれを「当たり前の行為」へと変身させます。例えば、自転車に乗るとき、こぎ出しが一番きついけれど、スピードが乗ってくればあとは楽になりますよね。
毎日歯を磨くように、机に座ったら、あれこれ何も考える前にパッと初めてしまうのです。 何度か試しているうちに、ある日、考えずにできている自分に気がつくはずです。
「さあ勉強するぞ!」と意気込まず、何も考えず、ペロッと問題集を開いて、サラサラと問題を解いてしまいましょう。


いかに自分にダメ出しできるか

  • 自分にダメ出ししても大丈夫な人は、どんどん伸びていく
  • 自分へのダメ出しができることと、自己否定は全く違う
戦後の高度経済成長期に、ソニーホンダが急成長したのは、電力や郵便など安定的なビジネスではなかったことで、自らダメ出しをし新しいことを必死に考えていく必要があったからです。
自分の弱みを認め、理解し、それを克服する力です。


他律を自律に変換する

  • 人は、他人に言われてやるより、自分でやりたいと考えてやるほうがすぐに行動ができる
  • 他律を自律に変換するとは、課題を自分事として考えること
例えば、「勉強しなさい」という他律を「勉強すればいい会社に務められお金持ちになれる」と自律変換するのです。
どうすれば上手く変換できるのか? それは、自分なりの目標や課題、夢を持つことです。自分で課題を設定し、自分の課題として認識し、夢のために実行するのです。
脳は「自分の課題だ」と実感したときに初めてやる気を出すのです。


ゲーミフィケーションで成長

ゲーミフィケーションとは、課題解決や日常生活の様々な要素をゲームの形に置き換えて楽しみながらやるということです。ルーティンワークや単純作業には特に効果を発揮します。
目標とする時間や分量を設定し「この勉強は何分で終える」「あと五ページ終わったら休憩する」など、まるでゲームを楽しむかのように遊び心を持って取り組んでみます。すると、脳の報酬系が刺激されて行動力、集中力がアップするのです。
ゲーミフィケーションをより効果的にするには、ご褒美を用意することです。ゴールに気持ちいいことや美味しいことなど自分が満足するご褒美を設定するのです。

ゲーミフィケーションは、ゴールを決めてスタートし、達成したときの満足感を得るということですので、このサイクルを毎日回していくと、どんどん成長のスビードが速くなっていくのです。
遊び心がある人というのは、やる気も集中力もあるのです。

そして、自分の「勝ち負け」を決めることも、自分が成長できる一つの工夫となります。
錦織圭選手や北島康介選手などトップアスリートたちは「自己ベスト更新」のため、毎日の激しい練習をしています。それは、昨日の自分に勝つということなのです。
勝ち負け」という感覚が自分の成長に大きな役割を持っていることを、トップアスリートたちは既に知っているのです。


ToDoリストは頭に持つ

  • ToDoリストをしっかり作っても、なかなか思い通りにこなせない
  • 短期的なものから長期的なものまで、実に多種多様
  • 優先的にやらなければいけないことはひとつではなく複雑に入り組んでいる
  • 様々な状況を読みなから、瞬時に「一番重要なこと」に目を向ける判断力が必要
  • ToDoリストのすべてをやることはできない
ゆえに、頭の中にToDoリストを持ち、柔軟に変化させて対応していくのです。

私は、全てのToDoリストを頭に持つのは不可能だと思っています。以前GTDを紹介しましたが、今忘れてもよい先のToDoは紙やPCにメモして忘れてしまうほうが良いと思います。茂木さんもおそらく直近のToDoを頭で考えたほうが良いといっているでしょう。
「GTDを簡単化し、うまく活用して、頭をすっきりさせる」

今日1日の勉強や仕事の流れやToDoを頭のなかにイメージし、今日行うことの段取りをするのです。
「これは、今日やらなくてもよいのではないか」「時間ができたからこれをやろう」と、今、やるべきことが見えてくるはずです。この時「脳内のToDoリストは固定したリストにしない」ことが重要なポイントです。
ToDoリストは、時々刻々と変化させ、臨機応変にダイナミックに変わって良いのです。


勉強や仕事に意味付けをする

  • 一番重要なことに目を向ける
  • 自分事として意味付けをし自律する
レンガで教会を作る仕事に対して、「単にレンガを積んでいる」と思うか「すばらしい教会を作りみんなが喜んでくれる姿が目に浮かぶ」と思って仕事をするのでは、どちらが楽しく有意義でしょうか?


利他

  • 利他とは、他人のために何ができるだろうかということ
  • 他人の立場で視点を持つ
  • 他人の立場で視点を持つときに必要となるのが共感の能力
人は共感を求めるとき、どうしても自分と似たような人に目がいってしまいがちですが、利他的な発想を考えた場合には、自分と違う人の立場に立てるかがポイントになります。
自分と似たような人を考えていると、その範囲のことだけに脳の回路が定められてしまうのです。 共感の壁を越えていくと、利他的な回路はどんどん強化されていきます。
例えば、iPhoneは、実に様々な人の利益になるよう作られています。 メール、ネット、ゲーム、動画、写真など、多くの人にとって役立つツールであることが前提になっています。それがまさにヒットの秘訣なのです。
  • 自分と直接かかわりのない世界を、いかにイメージできるか
  • 社会にとって自分は何ができるのか


いくつかエッセンスを紹介しましたが、脳科学として自己啓発に意味付けし、最近話題の「すぐやる」系をテーマにした「結果を出せる人になる! すぐやる脳 のつくり方」という本は、ぜひ子どもと一緒に読んでみてください。
言い回しがちょっとまどろっこしくてわかりにくいところがありますが、子どもがわからないところはそっとわかりやすく説明してあげましょう。
すでに上記エッセンスを理解していただいているので言うまでもないですが、「あ、これ知ってるよ」という読み方ではなく、人間の脳の仕組みとして捉え、自分の成長の糧にしようという気持ちで読んだほうが、より幸せになれますよ。「自分事」ですね。

「結果を出せる人になる! すぐやる脳 のつくり方」 (楽天/Amazon)
茂木健一郎
2016/05/27